NextHill LAB / Article 04

エラスチンとは

意味・働き・コラーゲンとの違いを、出典とともにやさしく解説

NextHill LAB | 読了目安 約8分

この記事の要点

  • エラスチンは、血管・靱帯・肺・皮膚など「伸び縮みする組織」にある構造タンパク質です。
  • 伸ばしても元に戻る性質は、エラスチン特有のアミノ酸「デスモシン」がつくる架橋に支えられています。
  • 肌の真皮では、ハリを支えるコラーゲンと、弾力を支える弾性線維(主成分がエラスチン)が役割を分けています。
  • 皮膚のエラスチンは入れ替わりがきわめてゆるやかで、年齢や紫外線による変化が積み重なりやすいと報告されています。

「エラスチン」という言葉は、化粧品やサプリメントでよく目にするようになりました。けれど、それがどんな物質で、体のどこで何をしているのかは、意外と知られていません。この記事では、辞書の定義から研究の知見まで、エラスチンの基本を順にたどります。

エラスチンとは ― 辞書による定義

エラスチン(elastin)は、動物の結合組織に含まれるタンパク質の一つです。水や一般的な溶剤に溶けにくい「硬タンパク質」に分類され、ゴムのように伸び縮みする性質を持っています。名前も、英語の elastic(弾力のある)に由来します。

DICTIONARY ― 辞書ではこう説明されています

ブリタニカ国際大百科事典
哺乳動物の結合組織にある構造タンパク質で、コラーゲンとともに軟骨・腱・靱帯・大動脈などに広く分布する。一般的な溶剤に溶けず、ゴムのような弾性を示す。
デジタル大辞泉
血管壁や靱帯など、弾性組織の一部を構成するゴム状のタンパク質。
世界大百科事典
構成アミノ酸の80〜90%を、ロイシン・アラニン・グリシン・プロリン・バリンの5種が占める。弾力性は、エラスチン特有のアミノ酸であるデスモシンの存在に基づく。

各辞書の説明を要約。出典:コトバンク「エラスチン」

辞書の説明に共通しているのは、「伸び縮みする組織にあり、弾力を生み出すタンパク質」という点です。

体のどこにあるのか

エラスチンは、体の中でも「伸びて、戻る」ことが求められる場所に多く存在します。

エラスチンが多く含まれる主な組織
血管(特に大動脈)心臓から送り出される血液の勢いを受け止め、しなやかに広がって戻ります。
靱帯・腱関節や骨をつなぎ、動きに合わせて伸び縮みします。
肺呼吸のたびにふくらんで、しぼむことを繰り返します。
皮膚(真皮)押したりつまんだりしても、元の形に戻る弾力を支えます。

なぜ「伸びて、戻る」のか

エラスチンは、細長い分子どうしが、ところどころで固く結び合った網目のような構造をつくっています。この結び目(架橋)をつくるのが、エラスチンだけに見られるアミノ酸「デスモシン」と「イソデスモシン」です。

網目は引っ張られると伸び、力が抜けると結び目に引き戻されるように元へ戻ります。エラスチンを主成分とする弾性線維は、引っ張ると2〜2.5倍ほどまで伸び、力を抜くと元に戻るとされています。

ポイント:エラスチンの弾力は、分子そのものの柔らかさと、デスモシンがつくる「結び目」の組み合わせで生まれます。架橋のしくみは、「なぜエラスチンなのか」で図を使って詳しく解説しています。

肌の中のエラスチン

皮膚は、外側から表皮・真皮・皮下組織の3層でできています。エラスチンが働いているのは、表皮の下にある真皮です。

真皮は、膠原線維(コラーゲン)・弾性線維・基質(ヒアルロン酸など)からなる組織です。このうち膠原線維は真皮の乾燥重量の約70%を占め、皮膚の強さを支えています。一方、皮膚の弾力をつくるのが弾性線維で、その主成分がエラスチンです。弾性線維は、エラスチンのまわりをフィブリリンという細い線維が取り囲む構造をしています。

量としてはコラーゲンのほうがはるかに多いのですが、「押しても戻る」という弾力は、量の少ない弾性線維が担っています。

コラーゲンとの違い

コラーゲンとエラスチンは、どちらも真皮の構造をつくるタンパク質ですが、役割は大きく異なります。

コラーゲンとエラスチンの比較
コラーゲンエラスチン
主な役割強さ・形を保つ伸び縮み・弾力
性質引っ張りに強く、ほとんど伸びないゴムのように伸び、元に戻る
真皮での量乾燥重量の約70%コラーゲンよりずっと少ない
特有成分ヒドロキシプロリンデスモシン・イソデスモシン

建物にたとえるなら、コラーゲンは柱や梁、エラスチンはしなやかさを生むバネのような存在です。どちらか一方だけでは、肌の構造は成り立ちません。

年齢・紫外線とエラスチン

エラスチンの大きな特徴は、一度つくられると、入れ替わりがきわめてゆるやかなことです。ヒトの皮膚から取り出したエラスチンを調べた研究では、年齢とともに一定の変化が蓄積しており、皮膚のエラスチンはほとんど入れ替わらず、長い年月をかけて変化が積み重なると報告されています(Ritz-Timme ほか、2003年)。

また、弾性線維を取り巻くフィブリリンの構造も、年齢とともに変化することが分かってきました。同じ人から採取した細胞で比べると、高齢期の細胞ではフィブリリンが部分的に凝集し、不均一な構造になっていたという報告があります(株式会社コーセー・星薬科大学、2018年)。

さらに、紫外線を長く浴び続けることによる変化(光老化)と、年齢による変化(自然老化)では、弾性線維の変わり方が異なることも知られています。辞書でも、皮膚のしわは弾性線維の老化や断裂によって生じるとされています。

ポイント:入れ替わりがゆるやかだからこそ、日々の紫外線対策や生活習慣といった「積み重ね」が、弾性線維を守るうえで意味を持ちます。

食べたエラスチンはどうなる?

食品や原料としてのエラスチンは、豚や魚などの組織から取り出し、分解して小さなペプチドにしたものが一般的です。

「エラスチン」の文字で描いた豚とカツオのイラスト
原料として使われるエラスチンの由来の例。ARCHIBEAUTには、国産の豚由来・カツオ由来の2種類を配合しています。

タンパク質は、食べると多くがアミノ酸に分解されて吸収されます。ただし近年の研究では、一部は小さなペプチドのまま血液中に入ることが分かってきました。エラスチンを分解したものをヒトが摂取したあと、エラスチン由来と考えられるジペプチド「プロリルグリシン(Pro-Gly)」が血液中から見つかったと報告されています(佐藤健司、2014年)。

なお、こうした研究は「体内に届くかどうか」を調べたもので、特定の食品やサプリメントを摂ることで肌が変わることを示したものではありません。研究は現在も進められています。

よくある質問

エラスチンを簡単に言うと何ですか?

血管・靱帯・肺・皮膚など、伸び縮みする組織にあるタンパク質です。ゴムのように伸びて元に戻る性質を持ち、組織のしなやかさや弾力を支えています。

コラーゲンとエラスチンは何が違いますか?

コラーゲンは引っ張りに強く、組織の強さや形を保つ役割を持ちます。エラスチンは伸び縮みする性質を持ち、弾力を担います。真皮ではコラーゲンのほうが量は多いものの、押しても戻る弾力はエラスチンを主成分とする弾性線維がつくっています。

エラスチンは年齢とともに変化しますか?

皮膚のエラスチンは入れ替わりがきわめてゆるやかで、年齢とともに変化が蓄積すると報告されています。また、長期間の紫外線曝露によっても弾性線維は変化することが知られています。

エラスチンは食べると吸収されますか?

多くはアミノ酸に分解されて吸収されますが、エラスチンを分解したものを摂取したあと、一部がプロリルグリシンなどの小さなペプチドとして血液中に見つかったというヒトの研究報告があります。

エラスチンの名前の由来は?

英語の elastic(弾力のある、伸縮性のある)に由来します。その名のとおり、弾力を生み出すタンパク質です。

2種類の国産エラスチンを、設計の中心に。

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REFERENCES

  1. コトバンク「エラスチン」(ブリタニカ国際大百科事典、デジタル大辞泉、世界大百科事典 ほか)
    https://kotobank.jp/word/エラスチン-37486
  2. 北海道大学 皮膚科学教室「皮膚の構造と機能」(真皮の構造)
    https://www.derm-hokudai.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/1-05.pdf
  3. Ritz-Timme S, Laumeier I, Collins MJ. Aspartic acid racemization: evidence for marked longevity of elastin in human skin. British Journal of Dermatology. 2003;149(5):951-959.
  4. 株式会社コーセー ニュースリリース(2018年7月2日)星薬科大学との共同研究 ― 加齢による真皮弾性線維の変化
    https://koseholdings.co.jp/ja/media/2018/07/20180702.pdf
  5. 佐藤健司「ヒト血中に存在する食事由来ペプチド ― 構造・含量・機能」日本ペプチド学会ニュースレター No.92(2014年4月)
    https://www.peptide-soc.jp/files/newsletter/PNJ92.pdf
本記事は、エラスチンという成分に関する一般的な情報を、公開されている辞書・研究資料をもとに整理したものです。特定の症状の診断・治療・予防を目的としたものではなく、特定の商品の効果を示すものでもありません。